その25.市場の盛衰

 古い書類を整理していたら、園芸新聞の切抜きのファイルがいろいろと出てきた。なかに15年前(‘92)の花き卸売取扱上位市場のランキングがある。この当時の全国1位は梅田生花・大植、続いて大田花き、FAJとなり、わが花満も堂々の
10位、82億の取扱高である。これを昨年(‘06)の園芸新聞のランキングと
比較すると、花き市場の盛衰がはっきりと見えてくる。ほとんどの市場がこの当時より取扱高を落としているなかで、現在1位の大田花きは157%の伸びで296億という売上げとなり、2位のFAJも184%もの高い伸びである。わが社は残念 ながら、売上げの大幅ダウンと市場統合の影響を受け、昨年の金額は70億9千で 全国18位となっている。最も注目すべきは姫路生花で、‘92年当時は33億で
全国49位であったが昨年の売上げは81億で、245%という驚異的な伸びを示しランキングも全国15位に進出している。

 この15年という年月は、花き市場にとって大きな変動期となった。大田花きから始まった機械ゼリは、全国の主要市場に導入されることとなり、同時に市場間の合併と統合が急速に進んでいった。現在、取扱上位にいる、なにわ、豊明、鶴見、鴻巣、東日本板橋などは‘92当時には名前のなかった市場である。全国の花き市場の
取扱高のピークは‘98年の5675億である。昨年は4550億であるから、金額にして1125億減、約20%ものダウンとなっているが、最近の下げ幅は少なくなっている。

 札幌60%、鴻巣50%、福岡60%、これは私が最近、これらの市場の経営者の方に聞いた前売りの割合である。全国の市場において急速にセリ前販売は拡大している。その内容は予約、ネット取引、相対売りなど様々である。市場におけるセリ販売は確実に縮小し、同時に形骸化の方向に向かっていると言えよう。2年後の市場手数料の自由化により市場間の売上げ格差はさらに拡大し、統合と廃業がすすんで市場数は、さらに減少する、といった厳しい状況が予想される。

 米国などでは、一部に相対市場は存在するものの、日本のような花市場は機能しておらず、大型生産者や輸入業者が、量販店と直接に結びついた流通が主流と聞く。
世界的に見ても、日本のように市場のセリを中心に物が流れる、という形はむしろ
少数派である。小規模でも優れた生産者、商売熱心な花屋さんという形が主流であるからこそ、花き市場が存在できるのかもしれない。関東の某市場などは「街の小さな花屋さんを応援します」というスローガンを掲げている。

「作るのも、売るのも、こまかいところをかわいがっとかんと、市場はいらんようになるかもしれんで」