「どーなっとるんかのう。カープは弱いのう」-現在の広島の挨拶はこんなもんである。郷土の誇りである「広島カープ」は、セ・パ交流戦は12球団中で最下位。セリーグの順位も7月3日現在、ついにドンジリとなってしまった。あまりの成績に、いらだちと、あきらめと、ため息の入り混じった言葉があちこちから聞こえてきそうな状況である。
「広島」というと、まずイメージされるのは「原爆」、そして「宮島」と「もみじ饅頭」、さらには「広島やくざ」も出てくるかもしれない。しかし意外に知られていないのが、「移民県」であることである。ハワイ、アメリカ本土、ブラジルなど海外移民が非常に多い。私の住んでいる廿日市市には地御前という地区があり、「アメリカ村」と呼ばれていたほど移住者が多い。私の義父もこの村の出身であり、ハワイに多くの親戚がいる。彼らの多くは、会社の経営者や医師、教師となって、比較的に裕福な「成功者」となっている。広島県人の結束力も強く、ハワイの日本語は「広島弁」とさえ言われている。
もう一つ、ほとんど知られていないが、広島県は日本一「棚田」の多い所である。段々畑が多いということは、広々とした平野が少ないことを意味する。出張で九州や関東あるいは新潟などに行くと、どこまでも平地が続いており、広島の風景と違うことを実感する。花の世界においても、県内の生産者は技術的に高レベルであるが、栽培面積は他県に比べると概して小規模である。海外移民が多いというのも、狭い平地と、広島県人の「上昇志向の強い気質」が結びついた結果であると言えよう。
カープは今日も苦戦している。9回の表、6対4、2点のリード。対戦相手の巨人は、ランナーをためて連打に次ぐ連打。あっという間に逆転されて3点差。ここまでテレビで懸命に応援をしていた父が、たまりかねて叫ぶ。「もういけん。切ってしまえ!」・・・・・広島県人は、決して気が長くない。どちらかというと、短気である。
「ほうは言うても、もちいとカープにがんばってもらにゃあ、広島の景気もようはならんよのう」