その14.趣味の園芸

 「こりゃどうなっとるんかのう?何か出てきよる!」最後の花を摘み取って外に出そうとして、私は思わずつぶやいた。年末に近くのスーパーで買った、5寸鉢のシクラメンのことである。良く陽の当たる窓辺に置き、時に液肥をやり、花殻を摘み、葉組みをする、ということをくり返してきた。しかし、上がってくる花の数もだんだんと少なくなり、3月に入ると1本しか咲いていなかったのである。その最後の1本を摘み取った時に、ごく小さな芽のようなものが、その下から出てきているのを発見したのである。―それから2週間後、それらは小さな花芽とわかるまでに成長してきた。「こいつらは、一体いつまで花を咲かせるつもりかのう」などと思いつつ、葉を外側に下ろして、花芽に十分に陽の入るように手入れに余念のない毎日である。

 「植物というのは、人が手をかけてやればやるだけ、正直に答えてくれる」―これはガーデニングの好きな人がよく口にする言葉であるが、花の世界の魅力の一面を良くとらえていると言える。植物というのは、人間の「愛」を裏切らないのである。もし、愛情をそそいだのに枯れてしまったとしたら、それはあなたの愛し方が間違っているのである。日照、水やり、土壌、肥料、病害などの、何かの要素に問題があった、と考えなくてはなるまい。

 私は時々、市場の片隅に放置され、傷んで枯れかかっている鉢花を家に持ち帰ることがある。引き取り手のない、市場のゴミである。すでに手遅れとなって、どんな処置をしても枯れてしまうものもある。しかしそれらの多くは、ピンチをし、植え替え、肥料をやり、陽に当てることで見事に再生してくれるのである。例えば、昨年の春に全く葉のない状態でゴミの中に捨てられていた観葉・セロームの尺鉢は、夏になる頃には見事な葉を一杯に繁らせて、わが家の玄関先を誇らしげに飾っていたのである。日増しに暖かくなっていくこれからは、植物の再生にとって最高の季節。私の目は「有望なゴミ」をいつも探している・・・。

「植物と仲ようやることが大事よのう。誰も持って帰らん<みなしごハッチ>を作っちゃいけんで。」