その03.応援

 7月の終わり、久しぶりに野球観戦の機会があった。場所は神戸、スカイマークスタジアムの「オリックス―ロッテ」戦である。少し遅れて球場に到着すると、広いスタンドはぎっしり満席状態。私たちは、一塁側の内野二階席のほとんど頂上あたりに、やっと自分たちの席を見つけることができた。それからまもなく、向かいの外野レフトスタンドの異様な動きに気づく。スタンド全体を埋めつくす黒シャツ軍団が大きく動いている。「チバ!ロッテ!マリンズ!」-スタンドが叫び、旗が舞、踊り、飛び跳ねている。この激しい声と動きの応援は、ロッテの攻撃中は休むことなく延々と続いている。「どうなっとるん。疲れるじゃろうに!」妻が思わず叫ぶ。試合は応援の迫力に勝るロッテが、4時間半の延長戦を制して4-3で勝利。

 試合後にロッテ応援席にいた息子に聞くと、ロッテの応援の激しさはこちらでは有名だという。広島カープを裏切り阪神ファンになっている彼は、「応援が面白そうやから」というだけでロッテ応戦席を取ったという。レフトスタンドを埋めつくした黒シャツの若者のかなりの部分は、「千葉から来た熱烈なロッテファン」ではなく、「神戸の普通の野球ファン」ではないのか。彼らは「ファンになったから応援をする」のではなく、「応援が面白いからファンになる」のである。これは明らかに我々の世代の常識とは違う考え方である。このような「逆転の発想」についていけるだけの、柔軟な頭と心がこれからは必要なのかもしれない。

「今の若い者は宇宙人。わしらには理解できんことばっかりよの。」