その33.交通事故

わが社は広島市内の中心部から外れた、西区の商工センターと呼ばれる流通団地にある。JRや電車の駅からは距離があり、車がないと不便な場所である。早朝や夜勤など多様な勤務体制のわが社の社員は、ほとんどがマイカー通勤である。私も入社以来、車を使用し、無事故無違反を長年通しているが、運転する限り交通事故は起こりうる。ほぼ1年前の私自身の人身事故の体験について記したい。

 平成19年6月某日午後5時頃、広島市郊外の交通量の多いK交差点で、私は横断歩道のある交差点を左折しようとしていた。正面の信号が青になった時に、左手から3人の女性が横断歩道を渡り始めるのが見えた。当然ながら、わたしはラインの手前で停止した。右手からは誰も渡ってこない。3人が通り過ぎ、続いてくる者がいないのを確認した私は車を発進させた。その時「ドン」という鈍い音車高の高いRV車なので前が見えない!(何か起こった!)あわてて車を降り、フロントをのぞく-そこには倒れた自転車と初老の女性!肘や膝から血が流れている!彼女はヨロヨロと立ち上がり、歩道へ歩く。私は急いで自転車を歩道まで移動する。車に戻り、ハザードランプを点滅させ路肩へ動かす。(彼女は自分で立っている、救急車はいらない)降りて話しかける。「警察を呼びますね」-女性はこっくりとうなずいた。(落ち着け、落ち着け、大した事故じゃあない)わたしはケイタイを取り出し、1,1,0と押す。

 「ジコデスカ、ジケンデスカ。」いきなり聞こえてきた。何?「事故ですか、事件ですか。」やっとわかった!私は事故の場所を伝える。ほどなくパトカーが2台到着。いきなり指示をうける。「車を向こうに移動して!」「運転免許証、車検証、保険証を見せなさい!」若い警官の指示をうける。「事故の発生時刻は?」覚えていない。「ケイタイを見ればわかるんじゃないの」(そうか、発進記録だ!)私は相手の女性がどの方向からきたのか、わからなかった。この時、立会いの警官から、相手の女性が右から来たことを知らされる。左からの横断者に気を取られて、再度右方向を確認することを怠ったのである。最後に警察より、相手の住所、氏名、℡、年齢が伝えられた。被害者は近くに住む、Yさんという61歳の主婦であった。

 実地検証は程なく終わり、私は女性の自転車を車の後ろに積み、彼女の指示するW整形外科に連れてゆく。診察の結果、幸い骨折にまで至らず、腕とひざの外傷のみであった。私は保険証にある緊急連絡番号を使って保険会社にかけ、事故状況を連絡した。その後、私は2度にわたって彼女の家を見舞いに訪れ、2回目には医師の診断書を受け取って、それを管轄の警察まで提出に行った。保険会社に保険申請書を提出し、保険金支払い通知を3度受け取る。事故からほぼ3週間後、自動車安全運転センターなる所より、1枚のハガキが届いた。そこには「あなたの累積点数は5点になりました」とあった。(あと1点で停止じゃないか!)事故の程度から、せいぜい3点程度の減点と思い込んでいた私はショックをうけた。早速、運転センターなるところに連絡した。「私どもは警察からの資料をもとに、判断するだけですからね。」という返事。管轄の警察に電話すると「私どもは資料を作るだけで、点数を決めるわけではないですから。」という返事。どちらにせよ、点数の変更などありようがないことはわかった。その後、検察の呼び出しや罰金の請求はこなかった。

 今にして思えば、意外に厳しい減点にはなったものの、命にかかわるような重大事故にならず、軽微な事故ですんだことに感謝すべきかもしれない。どんなに優秀なドラバーであっても、車を運転している限り、交通事故の可能性をゼロにすることはできない。突然の飛び出しや、反対車線からの車の進入による衝突など、避けようのない「運の悪い事故」というのもある。新聞やTVで連日報道される事故を見ても、私自身を含めて、いつ誰が重大事故を起こしたり、巻き込まれたりするか、わからないのが交通事故である。私たちに出来ることは、事故の可能性を出来るだけ少なくするような運転をすること。それは技術の問題というより気持ちの問題であろう。


 「ほんまに交通事故いうんは、やってもやられても気分が悪いけえのう。お互いに気いつけましょうで」